BLですが、構いませんねッ!
では、どうぞ。
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Wish
「琉夏くん、今帰り?」
放課後、みなこに呼び止められて二人で帰ることになった。ただ帰るのも何だったから、途中喫茶店に寄って話でもしながら。
みなこは俺にあれこれと聞いてきて、俺も適当に、時には小粋なジョークを交えつつ、面白おかしく話した。
「でね、カレンが「琥一君、変わったよね」……って、なんか言い方がおかしいの」
その名前がみなこの口から出てくるたび、彼女の頬は幸せそうに緩む。
「それで、そのこと話したら琥一君……あ、琉夏くんもう飲み物無いね。わたし、新しいの取ってくる」
「俺も行くよ」
そう言って二人で立ち上がる。みなこの持ってたコーヒーカップも、もう空だ。
「みなこ、何飲む?」
「わたし、アメリカン」
「じゃ、俺もそれ。砂糖とミルクは、いくつ?」
「いいよ、ブラックで」
サーバーから琥珀色の液体が落ちきると、みなこはカップを持って一歩下がった。
半年前までは、みなこが持っていたのはミックスジュースのグラスだった。
服装だってそうだ。前はおしとやかで女の子らしい雰囲気の服を着てたのに、今は原色バリバリで露出の高い派手な格好ばかりしている。
女の子ってのは、簡単に変わってしまう。
彼女をそうさせた張本人の顔を思い浮かべると、そいつは俺の頭の中で、いつもの怖い笑みを浮かべていた。
あいつも、変わった。
「なあ、みなこ。オマエに頼みがあるんだ」
席に着くと、俺は無意識のうちにそう言っていた。
「何?」
「大事なお願い。きいてくれる?」
「うーん……わたしに出来ることなら」
みなこは少し考えてから、いつもの笑顔でそう答えた。多分俺のお願いが何なのか、分かってない。
これは取り消しだ。
「やっぱいいや」
「え、どうして?」
「だって、無理そうだから」
「そんなこと、聞いてみなくちゃ分からないでしょ?」
「分かるよ」
首を傾げるみなこを見て、俺は苦いコーヒーをすすった。アメリカンな味がした。
「俺のお願いは、きっと、叶っちゃいけないんだ」
「どういうこと?」
みなこはまだ気にしているみたいだったけど、これでいいんだ。
言ったらきっと、こいつは俺のお願いを本当に叶えようとしてくれるから。
俺からコウを取らないで、って。
「みなこ、コウに似てる」
「え? 何、いきなり……」
「いきなりじゃないよ。ずっとそう思ってた」
「……そう、かなぁ?」
なんだか納得いかないようなことを言いながらも、みなこの顔は笑っていた。
笑顔も、なんとなく似てる気がした。顔は全然似てないけど、どこか暖かくて、ほっとする。
「ねえ、どのへんが似てるの?」
「ん? 優しいところ……かな?」
「そっか。琥一君は、優しいもんね」
「うん、優しいよ。俺にオマエを譲ろうとするくらい、優しい」
俺が欲しいのはそっちじゃないのに。
「え?」
「何でもない。そろそろ出よう」
「あ、待ってよ琉夏くん!」
なけなしの小銭を支払って店から出る。俺が呟いた言葉はみなこには聞こえていなかったようで、少しだけ安心した。
こんなお願いは、叶っちゃいけないんだ。
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兄弟△ルートは、奪い合いというより譲り合いに見えるんだぜ……!
というわけで、琉夏→主にみせかけたコウ←ルカでした。
たぶんバンビは「コウを俺にくれ」って言われたら、お願い聞いちゃうんじゃないかなあ……
[8回]
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