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【2024/11/24 03:42 】 |
高校デビュー!
琉夏とバンビ、下校イベント捏造。
バンビが元ヤンで高校デビューしたという特殊設定です、お気をつけください。

大丈夫な方は、つづきからどうぞ。

---

「みなこちゃん」
 名前を呼ぶと、彼女はくるりとり向く。
 小柄なわりにしなやかに整えられた無駄のない筋肉、つぶらな瞳でこちらを見てくる様子は、誰かが称したとおり本当に小鹿のようだ。
「あ、琉夏くん」
「一緒に帰らない?」
 何気ない誘いの言葉。それ一つで、彼女の顔はぱぁっと花のような笑顔に変わる。
「うん、いいよ」
 その返事を合図に、琉夏は彼女と連れ立って、校門を後にした。

 入学式の前日に偶然出会った彼女が、小さい時に一緒に遊んだあの子だったというのはすぐに分かった。琉夏の目には、彼女は全然変わっていないように見えたのだ。あの頃のまま、純真で、可愛くて、優しくて……きっとこれからの高校生活も、昔のように楽しいことが待っている。自分と彼女と、コウと、また三人で一緒に遊ぼう。
 そう信じて、彼女と仲良くやっていこう、とした矢先のことだった。


「琉夏くん……」
「ゴメン、先帰ってて」
「でも……」
 不安げな彼女を背中に庇い、琉夏は目の前のガラの悪い男を睨み付けた。
 中学時代ちょっとヤンチャしたツケが、まさか今こんなところで回ってくるなんて。とにかく今は彼女を無事に帰すことが先決だ。
 一緒に帰れないのは残念だけど仕方ない。彼女を帰そうと促した、その時だった。
「……やっぱり、駄目。琉夏くん、喧嘩するつもりでしょ」
「えっ……あ、ちょっと!」
「あぁ? 何だお嬢ちゃん?」
 琉夏の制止も聞かず、ざっと前に躍り出る小さな影。
「あなた達も、喧嘩しちゃ駄目!」
 拳を握り締める彼女の背中は、僅かに震えている。琉夏は慌てて彼女を引き戻そうと手を伸ばした。
「みなこちゃん、危ない!」
「へへっ、健気だねぇ。どうなっても知らねえぞ!?」
「!!」

 頬のこけた、にやけた面の男が、彼女の肩に手を置こうとする。琉夏はかっと頭に血が上るのを感じた。
「てめぇ……!」
 このタイミングでは、自分が盾になって庇うしか手はない。観念して琉夏が身を投げ出そうとした、その時だった。

「…………いい加減にしろよ」
「へっ……? あ、痛、イデデデデ!」
「……え?」
 突如上がった悲鳴。見れば彼女の細くて白い手が、男の手首を捕まえてひねり上げている。
「そんなに暴れたいなら、わたしが相手になってやるよ!」
「あの……みなこちゃん?」
 琉夏の声はどうやら彼女には届かないみたいで、今度はもう一人の方──大柄な男を下から睨み上げる。
「な、何だこの女……」
 大柄な男は何故だかびびっているように見えた。あんなに愛くるしい彼女の一体何が恐ろしいのか。後ろから見ただけでは分からなかった琉夏は、状況を傍観することしかできずにぼんやりとそんなことを考えていた。
 その間にも彼女は揺るぎなかった。
 手首を軽くひねり上げていた頬のこけた男の方を一振りで放り投げると、今度は大柄な男に向かって鋭いハイキックが飛んでいった。
「ひっ!?」
「やんのかやんねぇのか、あぁ!?」
 大柄な男のこめかみを、冷や汗が流れていく。彼女のつま先は、男の僅か3センチ手前でぴたりと止まっていた。

「き、今日はこのくらいで勘弁してやる!」
「お、覚えてろ~!!」

 人の波がギャラリーになる直前、男達はその場を逃げるように走り去っていった。
「みなこちゃん、あのさ……」
「言わないで!」
 後には、呆然とする琉夏と、真っ赤になった顔を両手で覆う彼女が残された。
「うう……もうこういうのはやめようって決めてたのに~! わたしの高校生活、もうおしまいだよ……!」
「あ、はは……」
 泣き出しそうな彼女に、琉夏は曖昧な笑みを浮かべて頭を撫でてやるくらいしかできない。
 そうか、つまり彼女も、俺達と同じなんだ。
「うん、でも、かっこよかったよ、みなこちゃん」
「琉夏くん……」
「メンチのきり方とか、なんとなくコウに似てたし。口調なんかもうソックリで……」
「琉夏くん!」
「え、何!?」
 彼女が急に顔を上げた。案の定、目尻には光るものが浮かんでいる。
「お願い、さっきのこと、誰にも言わないで!」
「え、あー、う~ん……」
「お願いっ!!」
 あまりの必至さに、ついついきゅんと絆されてしまいそうになる。だけどそこをぐっとこらえて、琉夏は「どうしよっかなぁ~」などと小さく呟いた。
「うぅ……」
「……うん。そうだ、そのまま拳を胸の前に持ってきて」
「……?」
「そうそう、そんで顎を引いて、俺の方向いて?」
「こ、こう?」
「そのまま、もう一回言ってくれたら、お願い聞いちゃう」
「…………お願い、琉夏くん」

 やったね、バッチリ好印象だ。琉夏は心の中でガッツポーズをした。

「うん、それじゃこのことは、俺達二人だけの秘密。な?」
「琉夏くん……ありがとう!」
 そう言って彼女は、またあの、花が咲いたような可愛らしい笑顔を浮かべた。

 どうやらこれからの高校生活は、昔と同じような、という風にはならないかもしれない。
 それでも、それはそれで楽しそうだ──琉夏はなんとなく、そんなことを思っていた。

---

元ヤンなバンビのネタでした。この子の「やんのか、あー?」はきっとめちゃめちゃ可愛いはず。
でもまあ、この話だと相当ドスがきいてそうですが(笑)

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【2010/08/02 20:25 】 | 兄弟+主 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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