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【2024/11/24 03:41 】 |
ノスタルジック・レッド
琉夏とバンビ、花火大会ネタ。
元ヤンバンビ設定です。お気をつけください。
先に『高校デビュー!』を読んでおくといいかもしれません。

大丈夫な方はつづきからどうぞ。
---

帰り道。
琉夏は浴衣にレッドのお面というお祭り全開スタイルで、みなこを家まで送っていった。
「ふふ、似合うね、レッド」
「だろ? 俺、ヒーローだから」
横合いから、顔の斜めにつけたレッドのお面をツンツンとつつく可愛らしい指。自由にさせているのは琉夏なりの余裕だ。いつものデート……例えば今の季節なら、海に泳ぎに行ったりとか、陽射しをよけながら公園通りを散歩したりとか、そういう、まだ時間がある時につつかれると、途中で男として色々たまらなくなってしまうのだが、今日はもう遅い。
それに先程からみなこが触っているのは、琉夏本人ではなくお面だけだ。しかも、何かを訴えかけるようなスキンシップとは程遠い、どこか懐かしいような顔をして無心にこちらに手を伸ばしてきている。
ちらりと視線をやると、ふと目が合う。今夜の彼女は浴衣をきっちりと着こなし、普段はそのまま流している肩までの長さの髪をアップにしていて、いつもよりもぐっと大人に見えた。
「ねえ琉夏くん、覚えてる?」
「?」
ふと彼女は、お面を触っていた手を止めた。
「昔、一度だけレンジャーごっこやって遊んだよね」
言われて琉夏はすぐに思い出す。ああ、と返事をする前に、みなこは何だか寂しそうに視線を落とした。


──覚えている。古びた教会のある開けた野原。

「ぼくがレッドで、コウがブラックだ! みなこちゃんは女の子だから、ピンクだよ」
「ルカくん、わたしもレッドがいい!」
「えぇっ? だめだよ。女の子はレッドになれないんだ」
「どうしてだめなの? ルカくんのいじわる!」
「いじわるじゃないよ! だってホントになれないんだよ! テレビだってレッドは男だけだもん」

三人組のガキ大将が少しその場を離れた、その時に起こったことだった。
兄弟がその時夢中になっていた特撮番組を、幼馴染の女の子も見ていたと知った。
嬉しかった。あまりに嬉しくて、レンジャーごっこをやろうと持ちかけたのだ。

その結果がこれだ。
「ふぇ……わたしも、レッドがよかったのに……」
「あっ……」
「何やってんだ、ルカ!」
覚えている。ついに泣き出してしまった女の子と、それを見咎めた兄の一喝をくらったこと。
その日は結局、女の子が泣き止むまでなだめるだけで日が暮れてしまったこともだ。


「……オトナゲなかったな、あの頃は」
「子供だったもんね」
二人は帰り道にある公園の入り口の柵に腰掛けていた。彼女の体を支えている手が触れそうな位置にある。
それに気付かないのか、みなこは俯いて、ぽつりぽつりと話し始めた。
「わたしね、あれがきっかけだったんだと思う」
「きっかけ?」
「あの時、女の子は弱いからレッドになれないんだと思ったの。悔しくて、強くなりたいって思った」
「それって、もしかして……」
琉夏には思い当たることがあった。去年、入学して少し経った時のことだ。余多門高の奴らに絡まれて、そして彼女が垣間見せた意外な一面。
「ちょっと方法を間違っちゃったみたい。気がついたら、他の男の子よりもずっと喧嘩が強くなっちゃってたんだ」
彼女は顔を上げた。少し頬が赤く見えるのは、恥ずかしいと思っていた過去を話しているからだろうか。
少なくとも、琉夏と見つめ合う形になっているこの状況にドキドキしたからというわけじゃないのだけは分かる。
逆に琉夏の方が照れてしまう。目をじっと見つめられるのは苦手だというのもあるけれど、目の前に頬を染めた女の子がいるという状況そのものに照れているのだ。

どうしようかと考えた末、琉夏はお面を外して、彼女の顔の前にそっと重ねた。
「ほら、オマエもレッドだ」
「……ぷっ」
お面の向こうから、くすくすと笑う声が聞こえてくる。顔がまともに見られないからという理由だったのだが、彼女はどうやら、慰められたと思ったらしい。
「ありがとう、琉夏くん。でも、レッドはもういいんだ」
向こう側からそっとお面を持ち上げられる。ちらりと見えた彼女の顔は、もうすっかりいつもの彼女に戻っていた。
「琉夏くんがいてくれたから、わたしはわたしだって思えるようになったの」
「みなこ……」
「だからそれは、琉夏くんが持ってて?」
「……うん」
彼女の細い指がすっとお面を持ち上げ、琉夏の頭に戻した。その際に立ち上がったことで、上目遣いな彼女の表情は見えなくなってしまったが、それはもうよかった。
お面をかけ直して、琉夏も立ち上がる。
「俺も、レッドじゃなくていいのかな」
「琉夏くんは、何色でも琉夏くんだよ?」
「そうじゃなくて」
「?」
からころといつもと違う足音を立てながら、彼女を家まで送っていく。

自分がいることで彼女が彼女らしくいられるというのなら、琉夏自身も、ヒーローでいなくてもいいのかもしれない。
きっとそうだ。いつかそう言おう。琉夏はそっと心に決めた。

---

元ヤンバンビシリーズ(シリーズ?)今回は、なんでバンビがぐれてたかというネタ。
といっても、あんまり不良しすぎると可愛くないので、軽めにしてみました。
ちなみに、このシリーズのバンビは琉夏一途ルートですけど、他のキャラとの話も見たい!って方はいらっしゃるんでしょうか…?

最近は女レッドが現れたので(某侍戦隊の姫ですね)このバンビさんもさぞかし嬉しかったことでしょう(笑)

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【2010/11/01 22:01 】 | 兄弟+主 | 有り難いご意見(0) | トラックバック()
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